安全弁の背圧(backpressure)、累積背圧(built-up backpressure)、既存背圧(superimposed backpressure)とは(計算方法も記載)

技術情報

安全弁の背圧には2種類ありますが、「それぞれどういう意味かよくわからない」、「ネットで探しても言葉の定義だけでイメージがつかない」ということがよくあると思います。しかし、この記事を見れば各背圧のイメージができ、業務でも使用できるようになります。

なお今回の内容はAPI STD 520の内容にそって記載しています。

累積背圧(built-up backpressure)、既存背圧(superimposed backpressure)

背圧は安全弁出口側の圧力のことを言いますが、2種類ありそれぞれの言葉の定義は以下の通りです。

  • 累積背圧(built-up backpressure):
    安全弁が吹出時、出口側の流体が流れることで発生する圧力増加
  • 既存背圧(superimposed backpressure):
    安全弁が吹出前、他の設備による出口側の圧力

API STD 520の原文では以下のように書いてあります。

Built-up backpressure
The increase in pressure at the outlet of a pressure-relief device that develops as a result of flow after the pressure-relief device opens.


Superimposed backpressure
The static pressure that exists at the outlet of a pressure-relief device at the time the devices is required to operate.
Superimposed backpressure is the result of pressure in the discharge system coming from other sources and may be constant or valiable.

しかし定義だけではイメージがつかないと思いますので、下記に図を載せて説明します。

図のようにセット圧力20 bargの安全弁が吹いたケースを考えます。

累積圧力(Built-up backpressure):
安全弁が開いて流体が流れるときの圧力上昇値なので、
安全弁~Flare KO Drumまでの配管圧損(Line ΔP)になります。

既存背圧(Superimposed backpressure):
安全弁が開く前の他の設備の圧力なので、
Flare KO Drumの運転圧力(上図だと0.2 barg)になります。

計算方法

これまでの内容で累積圧力(Built-up backpressure)と既存背圧(Superimposed backpressure)についてご理解頂けたと思います。

それでは、「実際に安全弁が吹いた時の安全弁出口の背圧はいくらなのか?」と思っているかもしれません。

それは、Flare KO Drumの運転圧力から配管圧損分を足した値になりますので以下で表すことができます。

安全弁が吹いた時の安全弁出口圧力=
累積背圧(Line ΔP)+既存背圧(Flare KO Drumの運転圧 0.2 barg)

Line ΔPは別途Aspen社の”Flare System Analyzer”等のツールを使用しないと計算できません。

安全弁出口は基本的に減圧して気体となるので圧縮性流体です。

圧縮性流体は、圧力とともに体積が変わるので経時的に減圧し、配管圧損の計算が複雑になるのでツールを用いて算出することになります。

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