蒸留塔の設計方法(運転圧力、運転温度の決め方)

技術情報

「蒸留塔の運転圧力や運転温度はどうやって決まっているのだろう?」、「蒸留塔の設計したいけどどこから決めていいかわからない」と思ったことありませんか?
しかしこの記事を読めば運転条件の決め方がわか、蒸留塔の設計を簡単にできるようになります。

運転圧力、運転温度の設計方法

まず蒸留塔の設計条件の決まり方の順番は基本的に以下になります。

  1. 塔頂温度
  2. 塔頂圧力
  3. 塔底圧力
  4. 塔底温度

それぞれの決め方を順に説明していきますが、
結局のところ蒸留塔の運転条件はコンデンサーの冷却水温度で決まってしまいます。

1. 塔頂温度

始めに塔頂の運転温度を決定します。
塔頂の運転温度はコンデンサーの冷却水温度条件で決まります

その理由を以下で解説します。

蒸留塔塔頂のコンデンサーでは冷却水を使用して塔頂ガスを冷却しています。
ただし冷却水はプラント建設地の大気条件で決まるため冷却水温度は固定値となります。


そのため冷却水で塔頂ガスを冷却できるように(コンデンサーで温度交差しないように)
蒸留塔の塔頂温度は冷却水出口温度より高くなるように設定します。

「冷却水温度より高ければ何度でもいいのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
塔頂温度は低ければ低い方がいいです


温度が低い方が相対揮発度が高くなり、蒸留塔としてより分離しやすくなるためです。
相対揮発度についてはこちらの記事に記載していますので良ければご覧ください。

温度が低すぎるとコンデンサーの伝面面積が過剰なることに注意してください。
冷却水出口温度と5℃の温度アプローチをとったりします。


例えば冷却水温度が下のように決まっている場合
冷却水入口温度:33℃
冷却水出口温度:43℃
43℃と温度アプローチ約5℃としてコンデンサー入口温度:48℃となります。

2. 塔頂圧力

塔頂温度が決まると塔頂圧力は自然と決まります。
蒸留塔は飽和状態のため温度が決まればその温度の飽和圧力が運転圧力となります。

先の例だと、塔頂運転圧力は48℃の飽和圧力となります。

3. 塔底圧力

塔頂圧力が決まると塔底圧力も自然と決まります。
塔底圧力は塔頂圧力と塔内圧力損失ΔPで決定します。

先ほどの例で、48℃の飽和圧力が17 bargとすると
塔底の運転圧力は17 barg+ΔP(ΔP:蒸留塔内のトレイやパッキングの圧損)となります。
ΔPを0.5 barとすると塔底の運転圧力は17.5 bargとなります。

4. 塔底温度

塔底圧力が決まると塔底温度は自然と決まります。
蒸留塔は飽和状態のため、圧力が決まればその圧力の飽和温度が運転温度となります。

先の例で、塔底運転圧力は17.5 bargでした。
その時の飽和温度100℃とすると、100℃が運転温度となります。

まとめ

まとめると以下のようになります。

  1. 塔頂温度:冷却水温度で決定
  2. 塔頂圧力塔頂温度の飽和圧力
  3. 塔底圧力:塔頂圧力+蒸留塔内の圧力損失ΔP(トレイやパッキング)
  4. 塔底温度塔底温度の飽和圧力

結局は冷却水の温度で蒸留塔の設計条件が決まるということに驚いたという方もいらっしゃると思います。
冷却水の温度も土地の大気条件で決まりますし、プラントエンジニアが蒸留塔の設計で検討するのは必要理論段数や原料供給段数がメインになります。

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