アンモニア 製造プロセスについて簡単解説

技術情報

近年の脱炭素技術の開発が進んできていますが、どの脱炭素技術にも水素が必ず必要です。
しかしその水素の調達のためには水素専用の新たなインフラが必要となります。

そこで既に確立したインフラを使用でき、
水素をNH3の形で運搬することができるアンモニアに注目が集まっていますが、
そもそも「アンモニア製造のプロセスフローはなんだろう?」と思ったことはありませんか?

しかし、この記事を読むことで
アンモニア製造プロセスを理解できるようになります

逆に製造プロセスを理解しないとアンモニア関連の話は理解できません

本記事ではアンモニア製造プロセスについて紹介します。

プロセスフロー

アンモニアの製造方法は高校で習った下記のハーバーボッシュ法じゃないの?と思った方も多いのではないでしょうか。

N2+H2 ⇆ 2NH3

その通りですが、ハーバーボッシュ法は低温・高圧条件と触媒・他の単位操作が必要です。
以下フロー図ですが、大まかに工程は6つに分類されます。
(アンモニア製造プロセスのラインセンサーであるKBR社のプロセス

ぱっと見ただけでは各工程内容が全くわからないので、それぞれの内容を順番に紹介しています。

アンモニアライセンサーによって工程の大筋は変わりませんが
KBRのプロセスであることご承知おきください。

①精製工程

この工程の目的は、原料である天然ガス中に含まれる硫黄分の除去です。
後工程の②水蒸気改質では主にニッケル系の触媒を使用しますが、
ニッケル系触媒は硫黄分により劣化します。
そのため脱硫装置により0.1 ppm程度まで硫黄分を除去します。

②水蒸気改質

この工程の目的は、H2製造です。ハーバーボッシュ法で使用するH2を作っています。
水蒸気と天然ガスをニッケル触媒使用して改質炉で反応させることでH2製造を行っています。

CH4+H2O = CO + 3H2 – 205.7 MJ/kmol

吸熱反応のため天然ガスを800-1000℃程度まで改質炉で加熱しています。
加熱炉のイメージでバーナーにて熱源は外部から与えられています。
水蒸気メタン改質/SMR(Steam Methane Reformer)と一般的に言われます。

発生したCOのシフト反応でもH2製造します。

CO+H2O = CO2 + H2 + 41.2 MJ/kmol

シフト反応によりCO2が発生します。これは発熱反応です。

吸熱反応がメインの反応で、改質炉出口で温度が下がります。

全体的に反応温度が高温なので、炭素の析出が問題となります。
炭素析出を抑えるため蒸気を過剰に供給し、蒸気:カーボン=3:1程度にする必要があります。
蒸気とカーボンの比はよくS/Cということが一般的です。

③自己熱改質法

この工程の目的は、②の未反応天然ガスを使用したH2製造&O2供給とN2供給です。
上記2つの目的達成のためにこの工程で空気を供給しています。

②水蒸気改質と同様にH2製造しているのですが、異なる点は熱源の供給方法です。
②水蒸気改質では、燃料ガスを燃焼させて外部に熱源がありましたが、
自己熱改質法では②水蒸気改質で得たH2を選択的に燃焼しています。

2H2+O2 = 2H2O + 241.8 MJ/kmol

そのため自己熱改質という名前の工程となっています。
反応後はガスが1000℃程度まで上昇し、その熱を後の熱交換器で回収してスチーム製造します。
O2の供給源が空気であることからAir ATR(Auto Thermal Reforming)と言われます。


また、空気供給によりハーバーボッシュ法で使用するN2はここで供給されます。

④CO転化

この工程の目的はガス中のCO除去とH2製造です。
COはアンモニア合成の触媒毒になるので、
③部分酸化工程で発生したH2OとCOを反応させてH2製造を行います。
②水蒸気改質で出た式と同じです。

CO + H2O =CO2 + H2 + 41.2 MJ/kmol

触媒の耐熱性を考慮して、
高温反応(HTS)(鉄系触媒)と低温反応(LTS)(銅系触媒)の2段階で行われます。

発熱反応で発生した熱はスチーム発生のため熱回収されます。

⑤合成ガス精製

この工程の目的は、ガス中の不純物の除去で3つセクションに分けられます。
3つのセクションとは、脱炭酸・メタネーション・Purifier(ピューリファイヤー)です。

脱炭酸
この工程では、アンモニア合成に不要なCO2が除去されます。
CO2は尿素工場が併設される場合には尿素の原料としてアンモニアとともに使用されます。

メタネーション
この工程では、脱炭酸でCO2を除去後のガスからCOとCO2を除去します。
CO転化の時にも記載しましたがCOやCO2はアンモニア合成の触媒毒になります。
そのため水蒸気改質反応の逆反応により、COやCO2を除去してメタンや水蒸気を生成します。

CO + 3H2 = CH4+H2O + 205.7 MJ/kmol
CO2 + H2 = CO+H2O – 41.2 MJ/kmol

メタネーション出口では、ドライヤーで空気中に含まれる水蒸気を除去します。
後工程のPurifierでは深冷分離を行うためです。


Purifier(ピューリファイヤー)
この工程では、不純物(メタン、アルゴン等)除去とガス中のH2:N2 = 3:1 に調整することが目的です。
深冷分離を行っており、空気供給より混入したアルゴンと過剰なN2を除去するため合成工程のコンパクト化にも寄与します。

PurifierはKBRがライセンサーで独自プロセスであることに注意してください。

⑥アンモニア合成

この工程の目的は、ハーバーボッシュ法によるアンモニア合成です。
10-20MPaGの高圧下で反応します。
アンモニア合成は生産率を上げるため循環系の中で行われます。
生成したアンモニアは製品アンモニアを冷媒として冷却され凝縮後分離生産されます。

使用される触媒は、従来では鉄系触媒ですがより効率向上のためルテニウムを使用した触媒も開発されています。

まとめ

  • アンモニアプロセスフローは6つの工程で構成されている。
  • ①精製工程:天然ガス中に含まれる硫黄分の除去
  • ②水蒸気改質:天然ガスと蒸気の反応によるH2製造
  • ③部分酸化:天然ガスと空気の燃焼反応によるH2製造
  • ④CO転化:転化反応によるCO除去とH2製造
  • ⑤合成ガス精製:脱炭酸によるCO2除去
            メタネーションによるCO/CO2除去
            Purifierによるアルゴン等の不純物除去とH2:N2の調整
  • ⑥アンモニア合成:ハーバーボッシュ法によるアンモニア製造

以上いかがだったでしょうか。簡単でしたが概要は抑えることができたと思います。
本記事を理解してもらえれば今話題のアンモニア関連の話についても理解できるようになると思います。

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