グレーアンモニア・ブルーアンモニア・グリーンアンモニアとは ピンクやイエローも?

技術情報

脱炭素技術の開発が進むにつれて、アンモニアが話題になっていますが
グレーアンモニア・ブルーアンモニア・グリーンアンモニアと頻繁に耳にしませんか?

アンモニアプロセスを理解した上でこの記事を読むとそれぞれの違いがわかるようになります。
また他記事ではあまり取り扱っていないピンクイエロー等についても知ることができます。

そしてアンモニアで脱炭素ためどういった検討が必要か理解できるようになります。


逆に言うとプロセスを理解しないと今話題のアンモニア関連の話は理解できません

こちらの記事でアンモニアプロセス紹介していますので、まだ知らない方は読むことをお勧めします。

グレーアンモニア

グレーアンモニアは通常のアンモニアプロセスのことです。
天然ガスを原料としてプロセスで発生するCO2を大気中に放出する場合グレーになります。

アンモニアプロセスでCO2が発生するのは主に以下の二つです。

  • 水蒸気改質工程:熱源供給のため燃料ガス燃焼時で発生したCO2
  • 脱炭素工程:プロセスガス中で発生・回収したCO2

水蒸気改質で発生したCO2は全体放出分の約25 – 30%になります。
脱炭素で回収・発生したCO2は全体放出分の約70 – 75%になります。

脱炭素で回収したCO2は、アンモニアプラントによく隣接される尿素プラントに使用されます
そのため通常のプロセスでは水蒸気改質で発生したCO2がそのまま大気放出されます。

ブルーアンモニア

ブルーアンモニアは、発生したCO2をCCUSにより大気への排出は0にするというものです。
つまり尿素プラントが隣接する場合は、
水蒸気改質で発生したCO2を回収するとブルーアンモニアになります。

ただし、水蒸気改質で発生したCO2は煙道ガスですのでほぼ大気圧のガスになります。
そのため低分圧のCO2回収に得意であるアミンユニットが採用されます。
CCSの場合、回収されたCO2は圧縮されて地中に貯留されます。

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グリーンアンモニア

グリーンアンモニアは、水素の製造時にCO2排出量が0というものです。
水素を水電解により製造し、水電解に必要な電力は再生可能エネルギー(水力、風力など)にすると水素製造時のCO2排出量は0になります。

$$ 2H2O → 2H2 + O2 $$

水電解のメーカーは、日立造船・東芝・イープラン・大阪ガスなど
様々な企業(産業用製品メーカー)が開発しています。

日揮ホールディングス株式会社

ただしグリーンアンモニアには課題が2点あります。

  • 電力コスト
  • 電力安定供給


電力コスト
水電解に必要な電力は膨大であり、1Nm3のH2製造に4~6 kWhかかります(日経XTECH)。
電気代を20円/kWhとすると、1 Nm3のH2製造に80円~120円かかります。
アンモニア1000 ton/d製造するときには、H2は約200万Nm3/d必要です。
つまりH2製造で1億6000万円~2億4000万円かかります。

アンモニアの価格は600$/ton(EneryShift)とすると、1000 tonで約9000万円です(1$=150円換算)。
以上から電力コストが非常に高いことがわかります。

電力安定供給
電力供給源が再生エネルギーの場合、安定に電力を供給できません。
するとH2製造も不安定となり、アンモニア製造が不安定となります。
その分の変動幅をプラント運転でカバーする必要があり、
激しいターンダウン運転を許容するための安全設計でコストが高くなってしまいます。

他色のアンモニア

グレー、ブルー、グリーン以外にもピンクやイエローなど様々な色があります。
それぞれの色とその違いを下図にまとめました。
違いは水素の製造方法です。

H2Tech

  • ピンク:水電解の必要電力を原子力発電から調達
  • レッド:水素をバイオマス燃料(木質チップ等)をガス化して製造
  • オリーブ:水素を微生物機能により製造
  • イエロー:水電解の必要電力を再エネと通常発電のミックスしたものから調達
  • ターコイズ:水素をメタンの熱分解により製造

まとめ

  • グレーアンモニア:通常(天然ガスを原料とした)のアンモニアプロセス
  • ブルーアンモニア:通常のアンモニアプロセスにCCSUを追加したプロセス
  • グリーンアンモニア:H2製造を水電解とし、電力供給を再生エネルギーとしたプロセス
  • 他色アンモニア:水素製造方法により色が変わる

以上いかがだったでしょうか。
脱炭素技術が進む中まだまだ課題が多いことを理解して頂けたと思います。
しかし課題解決のため世界中で技術開発が行われており今後の流れに期待していきましょう。

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